クラウド化で多くの企業が不幸になったIT業界
クラウド化によって、これまで、みなうまいことやってきた法人向けIT業界が変革を迫られております。
ハード | ソフト (プログラム) |
|
1970年代以前 | 自前 | 独自プログラム |
1980年代~ 2000年代 |
自前 | パッケージ または 独自プログラム |
2010年代以降 | クラウド | クラウド ごく一部の企業だけ 独自プログラム |
かなりざっくり言うと、このような感じになりました。よって、ハードウェアベンダーと、企業の独自プログラムを受託してきたSI企業が大変になりました。
ハードウェアリソースの活用度が低いハードをたくさん持っているような時代は終わり、リソースをフルに使い倒す仮想化されたクラウド基盤にとってかわったことは、これまで無駄なハードを販売していたメーカーからすると大きな衝撃でした。このクラウドも、最初は仮想PC、次に仮想サーバーとなり、最後にクラウドにとってかわりました。
また、ODMメーカーが急速に拡大したことにより、自社でデータセンターをいくつも持っているクラウドベンダーが、ODMメーカーと直で話を付けてオリジナルのハードウェアを格安で購入することができるようになった、中抜きの打撃も大きいです。
そして、クラウド化により「ファイルサーバー」「メールサーバー」「イントラ構築」のような、いわゆる「インフラ構築案件」は大きく縮小したことも、SI企業を直撃しています。昔は、ファイルサーバー一つ立てるにも、SI企業がやってくることもあったようですが、今はDropboxを契約すれば終わりです。
2008年に、ニコラス・カーが「クラウド化する世界」で予測した通りの世界が実現してしまった後に残ったのは、寡占できた企業のさらなる隆盛と、それに加われなかった大多数の企業の没落だったということでしょうか。
生き残るSI企業とそうでない企業
私自身はずっと、ソフトウェア企業で勤務してきたこともあり、ハードウェアビジネスについては勘所がないので、今後生き残るSI企業はどんなものか、考えてみました。
1.フルラインアップコンサル型
技術の最新動向を追いかけて、最上流から最下流まで全て手掛けられる企業。これは、お金がある大企業にぴったり寄り添って、システム投資を全てリードするタイプといってよいかもしれません。
こうした企業は、新しいテクノロジーを常時たくさん評価して、それについて発信する力、お客さんに良し悪しを伝えられる力(組織力)、IT投資の最初から最後まで全部を描く提案力が必要になります。日系のSI企業で、一番給料が高い、アルファベット3文字の会社が頭に浮かびましたが、実際のところ、どんなもんでしょうか。
2.利益率の高いクラウドサービス持っている型
- 高単価だけど、数千人以上使っているクラウドサービス
- 低単価だけど、数万人、数十万人以上使っているクラウドサービス
この辺を持っている会社が強そうです。SI企業は、月額課金型の小粒な法人向けITベンチャーをどんどん買収していきそうな気がします。このようなExit狙いで、多くのベンチャーがでてくるのであれば、素晴らしいことです。
3.低スキル仕事を従順にやる型
頭はないが、人件費の安さで勝負する「人貸し」企業も、意外に生き残るのではないかと思います。ブラック企業で、労働条件もアレでしょうが、「頭は良くなくても、単価が低い人、それも日本語が話せる人が欲しい」という需要は根強いのではと。
この辺りは、日本企業でよくある「日本語で全て済ませたい」という点と、「リモートでなく社内にいて欲しい」という点の両方を満たす、いわば言語バリアーがあるが故の需要です。低単価・低スキル・日本語の人をたくさんかき集めてくる力が、こうした企業の競争力の源泉かもしれません。これは馬鹿にしているわけではなく、こうした生き残り方もありだと思います。
まとめ
クラウド化により、無駄な投資がなくなってしまい、その無駄な投資で生きてきた企業にとっては大変な時代となりました。無駄な投資が戻ることもないので、どういう生き残り方があるのか考えて、生き延びて欲しいですね。