製品サービスを作った、お客さんも少しづつできてきた。では、サイトのメニューに「顧客事例コーナー」を作って、お客さんインタビューした内容を入れていこう。こう考える企業は多いと思います。では、顧客事例ってどうやって作ればいいの?

そんな方に向けて書いた記事になります。私は、クライアント様より月に数本の顧客事例の作成依頼を頂き、企画から納品まで全て行っています。そんな私の経験を共有したいと思います。ITセキュリティ製品を例にしていますが、それぞれ皆さんの業界に置き換えて考えてみてください。
ちなみにライターの方は、以下をお読み頂くと、クラウドワークスやランサーズなどで出ている「インタビュー記事作成案件」をきっちりこなせるのではないかと思います。クラウドソーシングサイトで求められているのは、当日の訪問とインタビュー、ICレコーダーの文字起こし、記事作成と納品、あたりかと思いますので、手順の後半を参考にしてください。
顧客事例を作る理由
はじめに、そもそも顧客事例を作る理由についてです。理由は3つあります。
1.見込み客を安心させる
情報システム部門で働くセキュリティ担当者を例にあげて考えてみましょう。ITセキュリティといっても幅広く、「ウイルス対策」「侵入検知」「デジタル証明書」「二段階認証」「暗号化」「データ消去」などなど、山のような課題があり、それぞれについて複数の会社から製品サービスが販売されています。
こうした企業の担当者は、まず検索して上位の会社を見たときに、「製品概要」「金額」などと共に「顧客事例」をチェックします。なぜチェックするか、というと、「他の会社でも利用されている製品であれば安心」だからです。
利用実績がない製品を使うというのは、セキュリティ担当者=サラリーマンとしては大きなリスクです。何かあったときに「そんなろくに実績もない製品を選んだお前が悪い」と批判される可能性があります。もし製品に何かあっても、「顧客事例がある製品」であれば「多くの企業で利用されているので、問題ないと判断しました」と言い逃れができます。
「言い逃れ、なんて、そんなレベルの低い話」と思うかもしれませんが、サラリーマンにとって自分のポジションを守ることは重要です。減点法で人事評価している会社であれば、小さな失敗が出世に大きく響く可能性があるのです。よって、この安心感という点を軽く考えないほうが良いです。
この「安心感」「言い逃れ」心理は、営業やマーケティングという「攻め」の部門よりも、情報システムや人事や財務といった「守り」の部門のほうが強く持っています。「守り」の部門は「問題なく仕事して及第点。何か失敗するととたんに責められる。褒められることはあまりない」ため、自分の減点につながる選択を特に嫌がります。
そんなわけで、製品サービスを選ぶ要素はたくさんあります。例えばITセキュリティであれば、機能、価格、導入までのスピード、管理工数、カスタマイズの可否などです。そして、担当者は口には出しませんが、選択基準には「安心感」というものもあるのです。
一般的には、
大企業>中小企業>ベンチャー
の順で安心感は変わってきますし、製品も
業界No.1製品>業界上位製品>聞いたこともない製品
の順で安心感は変わります。
もしあなたの会社が圧倒的な業界No.1製品であれば、事例などいらないかもしれません。しかし、もしあなたの会社自体、もしくは製品がダントツでない場合は、安心感を作ることが重要です。
「うちの製品サービスに、業界トップ3の顧客などいない、中小企業ばかりだよ」という場合、事例に価値がないかと言うとそうではありません。中小企業は、製品導入の際に「自分と同じくらいのサイズの同業他社」がどのような取り組みをしているかを気にしています。なので、中小企業しか顧客がいない場合は、最も大きな業界・会社サイズの事例から作りましょう。
2.横並び精神を刺激する
企業が最も欲しい事例が何かご存知でしょうか。それは、「業界で一番大きい会社の事例」です。例えば自動車業界であれば、「スバル」よりも「トヨタ自動車」の事例の方が価値が大きいですし、航空業界であれば「ソラシドエア」よりも「ANA」のほうが事例の価値は高いです。
なぜか。これは、「業界2位以下の企業は、業界1位の企業の動向をすごく気にしている」し、「業界4位以下のきぎょうは、業界トップ3の企業の動向をすごく気にしている」からです。通常、企業規模が大きければ、投資予算も大きく、優秀な人も多い傾向にあります。よって、「業界1位のあそこがやったのだから、うちもやらないとまずい」という横並び意識が刺激されるのです。
よって、事例は「各業界で横展開を図るため、同じ業界だけでなく、幅広い業界で作成すべき」です。貴社の製品サービスの売り上げが高い業界順に作成していくのがよいです。
3.同じ悩みと解決方法・効果を具体的に理解させる
特に法人向けの製品サービスの場合、できるだけ具体的に「何が役に立ったのか」を伝える必要があります。「いい製品で買ってよかったです」ではなく、「月間の運用コストが25%下がりました」という説明が望ましいです。
もちろん、こうした説明は製品サービス紹介でやっていると思いますが、どの会社も同じようなことを言っているので、買う側としては話半分です。しかしこれが具体的な事例になると、事例掲載企業の手前、嘘の内容を掲載するわけにはいかないので信憑性を増します。「なるほど、私が知っているこの会社が、このように悩みを解決したのか。うちの会社も同じ悩みがあるぞ」となるわけです。
顧客事例の作り方手順
次に作成手順です。手順は下記のステップとなります。
1.事例作成目的・予算確認
当たり前のことですが、事例を作成することで何を達成したいのかを確認します。通常は、事例作成=新規顧客獲得です。
ただ、1つ事例を作って、それが新規顧客獲得に何件寄与したかを完璧に突き止めることはできません。「Google Analyticsの数字のトレンドをみる」「同業他社の問い合わせが増加している」など、複数の指標で確認することになります。
また、予算の都合もあるので、「月に何本の事例を作れるか」を考えて作成するのがよいです。事例は一時にたくさん作るのではなく、少しずつ継続的に作るのが効果的です。サイトが定期的に更新されていることをGoogleに伝えるSEO的観点と、お客さんに「たまに来ると新しい事例がある」と思ってもらう「リピーター育成」の観点です。
2.ターゲット選定
例えば、A社の顧客が、「50%: 食品製造業」「30%: 飲食店」「15%: 卸売業」「5%: その他」であった場合、この割合が多い順に事例を作っていくべきです。特に50%の食品製造業が割合が大きいので、「どの食品を作っているか」「会社規模」「地域など」でターゲットを細かく分類するのがよいでしょう、
ターゲット企業は、優先順位ごとに1番から10番くらいまで作っておきます。
3.アポ取り
アポ取りですが、担当営業がいれば営業経由で打診します。担当営業がいなければ、電話で依頼するのがよいです(メールだと無視されることがあります)。電話で依頼する際には、「会社名」「依頼趣旨」「お客様のメリット」「所要時間」などをコンパクトに伝えましょう。
経験的に、事例をOKしてくれる率は、小さな企業ほど高く、大きな企業ほど低いです。小さな企業であれば、経営者がすぐに意思決定できますが、大きな企業になると部門間の調整などが必要になります。調整には時間と労力が取られるため、担当者は「面倒だから適当に言ってやめておこう」と考えるためです。
また、事例作成は条件付きでないと応じない会社も多くあります。例えば「製品を値引きしてくれたら事例作ってもいいよ」といった具合です。こうした交渉にどこまで応じるかは、社内で適宜検討してください。
小さな企業であれば、即座にOKが出て日程調整に入ります。大企業だと、事例を受けるか受けないかの判断だけで、早くても1週間、長いと1カ月以上かかります。よって、常に複数の会社に事例の打診をしておくのが無難です。
注意すべきなのは、取材時に「そこまでやるとは聞いてなかった」という事態を避けるために、メールで「事例取材で何をやるか、社名はでるか、写真は撮影するか、顔は映るか、名前は出るか」といったことを事前に伝えておくことです。
4.取材準備
OKが出て、日程が決まったら準備です。
事例作成に潤沢な予算を割ける会社であれば、以下のような人員でいくのがよいでしょう。
– インタビュアー
– カメラマン
– 担当営業(もしいれば。時間が合えば同席したいと言うはずです)
もし予算を抑えたい場合は、下記の体制となります。
– インタビュアー(兼カメラマン)
持ち物は、下記です。
– パソコン
– カメラ
– ICレコーダー(スマホでも可)
– 菓子折り
事前に準備しておくことは下記です。
– アウトプットの確認(ホームページ掲載だけか、紙に印刷してもOKかなど)
– 質問事項の作成(質問にランクづけしておく。「必須」「時間が余れば聞きたい」など)
– 撮る写真の構図、枚数の確認
5.取材本番
当たり前のことですが、場所は事前に確認して、遅くとも15分前には到着するようにしましょう。初めて行く場所であれば30分前到着が望ましいです(なんだか、新卒社員向けに伝える内容みたいですね)。
もし会議室以外の撮影が必要な場合、「先に写真を撮るか」「後で写真を撮るか」を決めてしましょう。個人的には先に撮ってしまったほうが良いと思います(インタビュー時に撮影時間の残りを気にしなくてもよいので)。
その後、ICレコーダーをセットして、事前に準備した質問に沿って、インタビューを進めていきます。おすすめなのは、インタビューしながら、内容をメモしていくことです。ICレコーダーで全てを聞き返すと時間がかかるので、質問の回答のポイントをメモしていきましょう。メモはPCでも、紙でも、どちらでもよいです。
6.社内チェック&お客様チェック
取材完了後、WordやGoogle Documentに書き出します(印刷する場合はIllustratorのファイルも作成します)。書き出したものを社内(または依頼者)でチェックし、OKであれば、お客様チェックに出します。
このチェックは、小さい企業であれば即完了しますが、大企業だと1カ月以上かかることもあります。そして大企業ほど、あとで様々な制限を課してくることが多いので要注意です。
7.掲載(印刷)
お客様チェックが終われば、ほぼ完了です。サイトに掲載、また印刷業者にIllustratorのファイルを送って完了となります。
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